新三が忠七を足蹴にする永代橋の“傘尽くし”やお熊を取り返しに来た家主と新三の掛け合い、 源七が新三を待ち伏せた閻魔堂橋の“地獄尽くし”等々、心地良い言い回しや江戸市井の日常会話の妙が随所に…。
新三の家で、「ほととぎすは鳴いたが鰹売りの声はまだ聞かない」と人が話しているところに、「鰹、鰹」と鰹売りの声がする…。
よく見れば”青葉”も目に入り、まさに、「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」の句の世界です。
材木商白子屋の妻お常、娘お熊、手代忠八が、下女お菊をそそのかして持参金目当てに迎えた婿の殺害を計画したという事件。 実際の大岡裁きは享保十二年二月、お熊・忠八・お菊が死罪、お常は三宅島に遠島、白子屋主人は財産没収の上所払いと、厳しいものでした。 実説を基にした噺家春錦亭柳橋の『白子屋政談』が、この脚本の元。本外題『梅雨小袖昔八丈』は、お熊が掛けていた黄八丈と、作品の季節感からきているそうです。