(作家) 井上ひさし
うちのおやじとおふくろが、前進座ができたときから大ファンで、昔、ちょっとしたかかわりがあったんです。
僕が最初に見た歌舞伎も前進座の『鳴神』でした。前進座には尊敬と敬意があるんです。
その前進座が『たいこどんどん』を上演して下さるのは、なんだかうれしくってしょうがないんです。
前進座のみなさんのことですから、日本人がずっと持っていた日常のよさ、たとえば手拭いのさばきや、下駄をはく時とか、着物のたもとの使い方、そういったちょっとしたしぐさもきっとうまくできるでしょう。
僕は役者が楽屋で暇そうに出番を待っている姿を見るのがきらいです。というよりつらいのです。どんな役者も舞台にでれば光りをはなつのに、なんともったいないと思うのです。そんな思いもこめて『たいこどんどん』をつくりました。
舞台のうえも、楽屋もはしりまわって、きらきらと汗をかいて、ちょっと休ませてよと笑顔でいってくれるような芝居にしたいのです。