明治おばけ暦 【あらすじ】
明治五年。
散切り頭で着物にだるまマントを羽織った開化青年、暦問屋角屋の若旦那栄太郎は今日も父親・徳右衛門の追求をかわし、芝居にうつつを抜かしている。
「来年の暦ができました!明治六年は、癸酉。歳徳神は巳午の方よろず良し。六月の後に閏六月があって、来年は十三ヶ月です」
得意そうに栄太郎は披露し、今年の仕事はもう終り、売れ行きも上々と思っていたが…
「号外!号がーい。ご改暦だよー」と新聞売り。……今般、太陽暦御頒行相成り候につき、来る十二月三日をもって明治六年一月一日と定め……
「今日はもう十一月の九日だってのに。師走三日まで、二十二日しかないじゃないか。今から暦を変えるなんて…そんなこと、あってたまるか…」
すでにつくった古い暦は返品の山。新しい暦は人気がなくてさっぱり売れず、かくして暦問屋角屋は大赤字。
改暦の張本人が政府高官・大隈重信だとわかった栄太郎、新七(後の黙阿弥)たちは、ある趣向を思いつく。
「狂言作者の筆先で、大隈候の心を動かせるかどうか、ひとつ勝負してやろうじゃないか」
果たして、その勝負とは…
目まぐるしく流れて行く時代、思うに任せない時代を生き抜いていく人々のしたたかでたくましい姿を描きます。
芝浜の革財布 【あらすじ】
ここは芝浜に近い貧乏長屋―
ただでさえ貧乏暮らしの上に、後先考えない呑んべえな魚屋の熊五郎は、それがもとで、にっちもさっちもいかなくなっていた。
今では商売の元手を貸してくれるところさえもなく、女房のお春にさんざん意見された熊五郎は、お春の前に手をついて、これからは性根を入れかえて一生懸命働くことを誓い証文をしたためるのだった。
さて、その翌朝。熊五郎が、お春に見送られて浜辺に来てみると、どうもお春が刻を間違えて起こしたらしく、夜はなかなか明けてこない。
そして……。
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