史実をもとに、人間の苦悩と歓喜を劇的に描いた大作家・真山青果。
九篇から成る『元禄忠臣蔵』の中で、「御浜御殿綱豊卿」は最も人気の高い一篇です。
青果作の『江戸城総攻』(二〇〇九)で芸術選奨を受賞した嵐圭史が満を持して綱豊役で再登場、当代のホープ嵐芳三郎が初役で助右衛門に挑みます。
甲府藩主・徳川綱豊(のちの六代将軍家宣)の御浜御殿では、奥女中はじめ奉公人たちの年に一度の楽しみ「お浜遊び」が賑やかに催されていた。そこへまぎれ込もうとするのは赤穂浪士・富森助右衛門。この日の客に吉良上野介がいることを知った助右衛門は、何としても一目仇の顔を見ておきたかったのである。綱豊は、浪士たちの動静や仇討の覚悟のほどを助右衛門に語らせようと挑発する。どうにか耐えた助右衛門であったが、綱豊の口から仇討の機会が奪われかねない事態を知り、一人吉良を討とうと決意する───
思わず涙せずにはおれない、日本人の美しい心と姿を、小説に戯曲に、旺盛に描いた長谷川伸。数多くの作品の中でも、ひときわ人生の綾を深く感じさせ、芝居の面白さを堪能させる人気作。十余年ぶりの役にともに意気込む矢之輔と國太郎のコンビでお届けします。
旅興行先で親方に見限られた駒形茂兵衛は、それでも関取になる望みが捨てられず、腹ぺこの無一文で江戸へ向かう。取手の旅籠・我孫子屋の酌婦お蔦は、通りすがりの茂兵衛に有り金と櫛簪を与える。「きっと横綱になって今日の恩返しに土俵入りを見てもらう」とうれし涙で誓う茂兵衛だった。十年後の春、利根川沿いに来かかった茂兵衛は、夢破れて、賭博渡世の旅姿。昔を思い出し、お蔦の行方をたずね当て………。
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