前進座初春特別公演
関取になる夢が破れてやくざになった茂平衛が、10年前に情けをうけたお蔦さんの危機を救って恩返しします。
今は失われつつある、美しい義理と人情、人の恩の大切さを描いた不朽の名作です。
旅興行先で親方に見限られた駒形茂兵衛は、関取になる望みが捨てられず、腹ぺこの無一文で江戸へ向う。
取手宿の安孫子屋の酌婦お蔦は、通りすがりの茂兵衛に有り金と櫛簪を与える。「きっと横綱になって土俵入りを見てもらう」とうれし涙で誓う茂兵衛だった。
十年後の春、利根川沿いに来かかった茂兵衛は、夢破れて、賭博渡世の旅姿。ふと昔を思い出し、お蔦の行方をたずね当て…
駒形茂平衛 … 藤川矢之輔
お蔦 … 河原崎國太郎 他
「松竹梅湯島掛額」の「お土砂の場」は、絶世の美女八百屋お七を奪おうという悪侍に、真言密教の「お土砂」を振り掛けてぐにゃぐにゃにしてしまう紅屋長兵衛。加持祈祷した「お土砂」は、硬直した死体を軟らかくする効用があるところから、それを芝居に利用したものですが、敵だけでなく、味方にも振り掛けてしまうという、歌舞伎には珍しい喜劇の一幕。
そのお七が、恋人吉三郎のもとへ行くために重いとがめを覚悟で櫓の太鼓を打つ、それを人形振りでご覧いただくお馴染みの「櫓のお七」。雪の降りしきる中、女心の一筋に、と懸命に舞う姿をご覧下さい。
―吉祥院お土砂の場―
本郷駒込の吉祥院に、八百屋お七の慕っている寺小姓の吉三郎がいる。「吉三郎と夫婦になりたい」とのお七の願いは叶えられずにいた。
実は吉三郎には、紛失した「天国(あまくに)」の短刀を見つけ次第、国元の許婚との婚礼、家督相続という大望があった。
一方、二人の恋を叶えようと「紅長(べんちょう)」というあだ名の小間物屋・紅屋長兵衛が仕組んだ奇策が、思わぬ展開に…。
加持祈祷を受けた「お土砂」を次々と手当たり次第に紅長は振りかけていく…。
―本郷火の見櫓の場-櫓のお七―
短刀が今宵の内に見つからなければ吉三郎は切腹。吉三郎に会いたい一心のお七は木戸へ。
火の見櫓の太鼓で木戸が開けられるが、極刑は免れない。それでもお七は意を決し、降りしきる雪の中、火の見櫓へ駆け上り、櫓の太鼓を打ち鳴らす…。
紅屋長兵衛 … 藤川矢之輔
八百屋お七 … 河原崎國太郎
小姓吉三郎 … 嵐 芳三郎
お七の母・おたけ … 山崎辰三郎 他