佐倉惣五郎(前進座では役名:木内宗五郎)の事蹟で、物語化されたものでは、歌舞伎や講談の『佐倉義民伝』が知られており、「甚兵衛渡し」「子別れ」が名場面として特に有名です。
前進座の『佐倉義民伝』は、この二場の前段として、宗五郎が百姓たちのリーダーとして現れ出る様子を描きながら物語の背景と状況を伝える「門訴の場」を置き、「門訴から子別れまで」を、主に上演してきました。
今回は、この前半に続き、後半に三場(場割の三幕目)を加えて、将軍への「直訴の場」、宗五郎一家の最期の様子、一家を失った悲嘆、怒りを荒事で見せる「祈念の場」、おしまいの「印旛沼の畔の場」では残された百姓仲間たちが希望を持って進もうとする様をお見せします。
名場面だけではない、直訴事件の全貌と人間・宗五郎の苦悩と決死のドラマ全体を明快に見せ、涙のあとに明るさが灯る「通し上演」に仕上げる所存です。
なお、前進座での『佐倉義民伝』通し上演は、1967〜1968年に、船橋ヘルスセンター大劇場、他で上演して以来51年ぶりになります。