<場割り> 通し上演 三幕六場
  一幕目   江戸堀田家下屋敷門前の場 (門訴の場)
  二幕目 第一場 佐倉在印旛沼渡し小屋の場 (甚兵衛渡しの場)
    第二場 木内宗五郎住居の場    (子別れの場)
  三幕目 第一場 上野東叡山直訴の場 (直訴の場)
    第二場 仏光寺光然祈念の場    (祈念の場)
    第三場 印旛沼の畔の場

佐倉惣五郎(前進座では役名:木内宗五郎)の事蹟で、物語化されたものでは、歌舞伎や講談の『佐倉義民伝』が知られており、「甚兵衛渡し」「子別れ」が名場面として特に有名です。

前進座の『佐倉義民伝』は、この二場の前段として、宗五郎が百姓たちのリーダーとして現れ出る様子を描きながら物語の背景と状況を伝える「門訴の場」を置き、「門訴から子別れまで」を、主に上演してきました。

今回は、この前半に続き、後半に三場(場割の三幕目)を加えて、将軍への「直訴の場」、宗五郎一家の最期の様子、一家を失った悲嘆、怒りを荒事で見せる「祈念の場」、おしまいの「印旛沼の畔の場」では残された百姓仲間たちが希望を持って進もうとする様をお見せします。

名場面だけではない、直訴事件の全貌と人間・宗五郎の苦悩と決死のドラマ全体を明快に見せ、涙のあとに明るさが灯る「通し上演」に仕上げる所存です。

なお、前進座での『佐倉義民伝』通し上演は、1967〜1968年に、船橋ヘルスセンター大劇場、他で上演して以来51年ぶりになります。

かいせつ・みどころ

  • 『佐倉義民伝』は、嘉永四年(一八五一)、江戸・中村座初演。下総佐倉で領主の圧政に苦しんでいた村人たちを救うため、名主の惣五郎(宗五郎)が江戸へ出て直訴に及んだ事件が劇化されて大当たりしました。
  • 前進座では「門訴から子別れまで」の練り上げられた演出で前進座歌舞伎の代表作の一つに挙げられています。今回の上演は「子別れ」の後に、「直訴の場」「祈念の場」などを含んだ構成で、より真実に迫り、見どころ満載の『佐倉義民伝』をご覧いただきます。
  • 宗五郎役は嵐芳三郎が初役で勤めます。至誠、情愛、決死と大きな役どころを凛々しく演じます。女房おさん役はこれも初役で河原崎國太郎が情感豊かに演じます。渡し守甚兵衛役と光然和尚役の二役に藤川矢之輔。前者は宗五郎と心通わす様をじっくりと、後者は悲嘆と怒りを荒事とともに堪能させます。前進座の俳優・スタッフ陣が、劇団ならではの一体感が作り出す、感動の舞台にご期待下さい。

あらすじ

四代将軍家綱の治世のこと。下総国佐倉領の村々は数年続きの凶作。藩主堀田上野介はあろうことか年貢の割増しを申し渡す。名主総代の宗五郎は百姓たちと江戸の堀田家上屋敷の門前で窮状を訴えるのだが、願いははねつけられる。最後の思案は、死罪は免れられない将軍への直訴。宗五郎は妻子に別れを告げるためひそかに国もとへ向かう。印旛沼では渡し守の甚兵衛が禁を破ってまでも船を出し、ようやく妻おさんと子のもとへ。安堵も束の間、宗五郎は決意を告げ、おさんに去り状(離縁状)を渡し、子らと別れようとするのだが……。

 


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Zenshinza Kabuki
May 2019 National Theater of Japan