【あらすじ】

 

 天保二年五月、赤城神社の祭礼のタべ。船宿萬字屋の店先では、女将のおちせが下ッ引から、このところ江戸の町を騒がせている盗入〝鼠小僧″の話を聞き出していた。入の引けた店先に奥から姿を現す和泉屋次郎吉、三年の問江戸を離れすっかり堅気になった、かつての〝鼠小僧″である。しかし、おちせも船頭の菊松も、次郎吉が今も大名屋敷で盗みを働いていると思い込んでいた。そこへ、「泥棒々々」の声に追われた湊屋音次が逃げ込んでくる。匿いながら、その身の上を聞く次郎吉―。

  萬字屋の贔屓客の奪われた大事な紙入れを取り返すため、次郎吉がト者垣内艮山の家へやってくる。しかし艮山もまた、次郎青が江戸を離れている間に奉公先が〝鼠″に入られ、次郎青に恨みを持っていた。

 一方、昔、次郎吉に助けられた菊松は、萬字屋の下女おとしの兄が、実はもう一人の、〝鼠小僧″音次だったと突き止めるが……。 次郎吉は何としても音次と話をつけようと、追手の目をかわしつつ、屋根の上で対時する――。

 

【かいせつ】

 

 江戸の講談にはじまり小説・ドラマと今日に至るまで娯楽劇のスターであり続けている「鼠小僧」。巨匠・真山青果による本作は一九二九(昭和四)年に本郷座で初演。二人の鼠小僧が出会う斬新な筋立てとスリリングな展開、人間描写の深さが面白さとなっています。

  数多くの青果作品の名舞台で知られる前進座が、その蓄積を存分に生かしながらも現代的な構想と演出、新鮮な配役で、端正で活き活きとした時代劇をお届けします。