牛若丸

あらすじ・みどころ

 いまから八百年ほど昔。世の中は源家と平家に別れて争っていました。源義朝の妻、常盤御前(栄之丞)はわが子牛若丸を連れて逃げているところを、捕えられてしまいます。しかし、平宗清(臣弥)は、情けをかけて母子を逃がしてやるのでした。
(伏見の里 雪の場)

何年か後、京の都で謎の美少年が夜毎五条橋に現れ、早業で人の刀を奪い取るとの噂が流れます。実はこの少年こそ、牛若丸(有之祐)。噂を聞きつけた、武蔵坊弁慶(渡会)は、懲らしめる為に牛若丸に斬りかかりますが、降参し、二人は主従となります。(五条橋 月の場)

その後も、鞍馬山で剣術の稽古に励んでいた牛若丸は、大天狗僧正坊(喜八郎)から、平家に打ち勝つための兵法書の一巻を与えられます。牛若丸は、その一巻を手に弁慶を伴い、勇躍して陸奥へと旅立つのでした。(鞍馬山 花の場)

 

歌舞伎で描かれる義経の世界

歌舞伎には、源義経にまつわる芝居がいくつもあります。白馬にまたがり、兜(かぶと)の下には美少年の顔──それが多くの人がイメージする義経です。
しかし、本当はどんな人物だったのか、だれも知りません。義経に関する史料は少ないのです。少ないからこそ、数々の伝説が残っています。伝説と歴史は違います。義経を「物語」の登場人物として見てみると、その人生に共感したり、感動したり、いろいろなことを考えさせられます。伝説にはきっと想像力をふくらませる魔法のような役割があるのだと思います。

 

伝統の美を味わい尽くす

「雪月花」の三幕で形成された舞台には、衣裳・舞台装置など色鮮やかな世界が広がります。そして、女形、舞踊、立廻りと、歌舞伎の魅力を十二分に楽しんでいただける作りになっています。