一生懸命準備した大切な芝居を、ステージに乗せられなくなる、という異様な事態が演劇人を苦しめ続けている。
 そんな状況下でありながら、この秋、前進座の皆さんと再び新しい物語を生み出すこととなった。古典落語「妾馬」が題材だが、この『一万石の恋』では落語とは真逆の結末が待っていて、愛する人のためには命を投げ出す覚悟の乙女の宣言に、愚かな殿様やアホな家臣たち、そして無責任な長屋の住人たちが、ドタバタ騒ぎを演じることになる。
 長屋の井戸端で交わされる可笑しな会話や、恋人同士の甘いラブシーンに、胸をワクワクさせてほしい。そして、マスクの下から思わず漏れる笑い声で会場が満たされることを期待して、前進座の皆さんと一緒に汗をかこうと思う。

 

 

あらすじ

 小さな藩のお殿様・赤井御門守は女嫌いの芝居好き。今日も今日とて御小姓相手に芝居ごっこ。お世継ぎがなければ藩はお取り潰し…家臣達は頭が痛い。
 そんなある日、お殿様は下城途中で俄かの腹痛、裏長屋で厠を借りる羽目に。手水を差し上げた長屋の娘・お鶴にお殿様は一目惚れ。家臣たちは大喜び―「すぐにあの娘を召し抱えろ!」。
 お鶴の母、兄をはじめ長屋一同「大変な出世だ」「支度金が下される」と盛り上がる。ところがお鶴には恋人が…「あの人と一緒になれないなら私は死ぬよ!」。 命懸けの恋を前に周りの説得も無力。しかしお断りしたらどんなお咎めが…
 困った一同がひねり出した奇策とは!?。

 


 

 

このページのTOPへ