一生に一度あるかないかという五重塔建立の大仕事―。
江戸で名うての棟梁、川越の源太(藤川矢之輔)が請け負う事になっていた
この仕事を「ぜひとも自分に」と朗円上人(中村鶴蔵)に願い出たのは、渡り
大工の十兵衛(嵐圭史)。
腕はあるのに世渡りが下手で、仲間から“のっそり”とあだ名される十兵衛が、
「大工となって生きる以上は、一度でよい、死んでも名の残る立派な仕事がし
たい」と思い詰めての申し出だった。
源太の女房・お吉(小林祥子)も子方の大工・清吉(中嶋宏幸)も、十兵衛が
親方を裏切ったと不満を抑えきれない。十兵衛の女房・お浪(浜名実貴)には
亭主の思いが痛いほどわかるが、これまで源太やお吉に受けてきた恩を思う
と動揺を隠せない。
最初は、恩も義理も忘れて自分を出し抜く仕業だと激怒する源太だが、考え
悩んだ末、十兵衛に仕事をゆずろうと決心して……。
十兵衛の一徹さ、源太のきっぷのよさ―。
職人としての意地と生き様、友情と信頼を描いて全国で絶賛された舞台、待望の再演!!
― 中村梅之助相勤め申し候 ―
魚屋の宗五郎(梅雀)は、商売熱心な律義者。だが、酒乱が玉に瑕(きず)とて禁酒の誓いを立てていた。
明神様の祭りの日、磯部の殿様に妾奉公していた妹が、不義密通の疑いでお手打ちになったという知らせ。父親太兵衛(竜之介)、女房おはま(
國太郎
)、若い者三吉(
広 也
)らが騒ぐのを抑えているところへ、訪ねてきた腰元おなぎ(
菊之丞
)から、不義密通は濡れ衣と聞かされ……。
おなぎが持参した酒に手をつけ、ついには酒乱の態で「磯部の屋敷へ」と家を飛び出すまでの、迫真の演技と見事なアンサンブルは、生世話の醍醐味――。
▲このページのトップへ
|