
若い頃から、"昼行燈"と綽名されていた大石内蔵助は、ひょんなことからわりない仲になった女中のお幸を追って京へ。
そこで京都藩詰めになっている幼馴染みの小平次
と再会し、小平次が出入りする京扇問屋の恵比須屋市兵衛の指南で女遊びを修業…。
祖父の死で赤穂五万三千石の国家老を継いだ内蔵助は、やがて但馬京極家の家老の娘りくを娶る。婚礼の夜、「疲れていよう。今夜はゆるりと静かに寝るがよい。案ずるな、明夜、ゆるりとな」といたわる内蔵助だった。
内蔵助は江戸の浅野家上屋敷で若い藩主、内匠頭からお家断絶になった備中松山城の受領役をおおせつかる。夫人阿久利(のち
瑤泉院
)は内蔵助を頼りに…。
松山城の城代家老鶴見は名も同じ内蔵助。城を枕に討ち死覚悟との風説流れるなか、武装せず平服で城に乗り込んだ大石内蔵助の春風駘蕩ぶりに、無骨一徹の鶴見は…。
十年後、赤穂に届いた「内匠頭殿中刃傷」の急報に"国を守って平穏に暮らし平凡に生きたい"という内蔵助の願いは破れた。
英雄譚ではない、人間味あふれるドラマ。

淡い恋に目覚める青春時代から、浪士を率いて討ち入りに向かっていくまで、人間味溢れる大石内蔵助をご覧いただきます。
城代家老になっていく内蔵助と、侍から町人へと転身する小平次は生き方を異にしながらも、心底は「戦を好まない心」で結ばれていました。内蔵助ら四十七士の行方を見守る妻りく、
瑤泉院
、浮橋太夫など女たちの生き様を織り込んで、元禄という時代を重層的に描きます。
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