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あらすじ

 江戸日本橋長谷川町で長唄を教えるおしず(今村文美)と、その妹・おたか(浜名実貴)。貧しいながらも明るく健気に暮らしを立てている。二人には、徳川幕府の転覆を狙う一党の仲間となり、三年の入牢の後江戸払いとなった兄・栄二(武井茂)がいた。かつては優しかった栄二だが、今は時折現れて、「平等な世の中をつくるため、世のため人のため」と言っては金の無心をし、二人を苦しめていた。

 ある日、日頃から親しくしている生け花の師匠・絹女(前園恵子)から、おたかに縁談が持ちかけられる。相手は、おたかも密かに想いをよせる信濃屋の友吉。おしずは、なんとしてもこの縁談をまとめようと、絹女と友吉の母・おてつ(田中世津子)を前に、兄・栄二のことを打ち明ける…。

 そんな二人のもとへ、しばらく姿を隠していた栄二が現れる。「なにがあってもおたかの幸せの邪魔はさせない」と、おしずは包丁を握りしめ……。

 おたかは子どももできて幸せな日々を送っている。おしずの周りでは、今度はおしずを錺職人の貞二郎(益城宏)に嫁がせようという話が進んでいた。信じられないとおしずは尻込みするが、貞二郎はすんなりとこの話を受け、おしずもようやく幸せをつかんだかに見えた。

 あるとき貞二郎は、自分が昔作った飾り物を、おしずがいくつも持っていることを知る。「これは俺が、鶴村の旦那(嵐圭史)に頼まれて作った簪だ。とすると、おしずは旦那の……」と疑念を抱いた貞二郎は…。