たいこどんどん

企画意図

  『たいこどんどん』は、前進座としては1987年3月、「奇想天外な発想と言葉遊びを駆使した、抱腹絶倒の笑いのかげに、現代を鋭く斬り裂く風刺が潜む―― 井上ひさしの劇世界に初めて挑む」意欲的な挑戦として、開場5周年を迎える吉祥寺・前進座劇場の記念公演として初演されました。
 初演当時、井上ひさし氏は、次のように語っています。
「うちのおやじとおふくろが、前進座ができたときから大ファンで、昔、ちょっとしたかかわりがあったんです。僕が最初に見た歌舞伎も前進座の『鳴神』でした。前進座には尊敬と敬意があるんです。
 その前進座が『たいこどんどん』を上演して下さるのは、なんだかうれしくってしょうがないんです。
 前進座のみなさんのことですから、日本人がずっと持っていた日常のよさ、たとえば手拭いのさばきや、下駄をはく時とか、着物のたもとの使い方、そういったちょっとしたしぐさもきっとうまくできるでしょう。
 僕は役者が楽屋で暇そうに出番を待っている姿を見るのがきらいです。というよりつらいのです。どんな役者も舞台にでれば光りをはなつのに、なんともったいないと思うのです。そんな思いもこめて『たいこどんどん』をつくりました。
 舞台のうえも、楽屋もはしりまわって、きらきらと汗をかいて、ちょっと休ませてよと笑顔でいってくれるような芝居にしたいのです。」
 この言葉のとおり、“ちょんまげミュージカル”と銘打ったこの作品は、創る側も観る側も、理屈抜きに楽しみ、その中で「人生とは何か」をしみじみと考えさせられる、「座の財産演目」といわれる作品となりました。

 いま、日本は明治維新前夜と同じように、大きく動こうとしていると思います。どんなに時代が変わっても、庶民はしたたかにたくましく生き抜いていく、そんな思いと笑いと生きる希望を、江戸から明治に移行する時代の主人公二人の東北珍道中に託して、全国各地にお届けします。
 日本が誇る戯作者・井上ひさし氏の傑作『たいこどんどん』―〝みちのく漂流潭〟を、前進座の当代を担う俳優陣が、東日本大震災からの復興に願いをこめて演じます。
 “前進座発!東北復興応援歌”『たいこどんどん』に、ご期待ください!!