記録的と云われる花粉の季節が本格化してまいりましたが、皆様にはいかがお過ごしでしょうか? 連日くしゃみの止まらない笛師の藤太こと石田聡です。
今回は、前進座公演においては初舞台となる上滝啓太郎君に初旅の感想を聞いてみました。
こんにちは、上滝啓太郎です。カミタキケイタロウと読みます。去年の4月に前進座に入りました。どうぞお見知りおきを。
この「出雲の阿国」が私の前進座の初仕事となります。と言うわけで今回の中国地方巡演は初めてづくしの初体験ツアーでもあります。
何といっても、前進座の初舞台でありますから、緊張でガチガチでございます。その上、もらった役が5役。五重人格にならなければにりません。順を追って役を申しますと、
1、阿国の踊りを観に来た客。
2、言緒(高橋佑一郎さん)の下人
3、ひげの大工の棟梁
4、九蔵のの配下(またしても佑一郎さんとコンビ)
5、たたらの男たち
無論、化粧も衣裳も自分でやるわけですから舞台裏はまるで大水に襲われたかのような騒々しさでてんやわんやううになります。てんやわんやは舞台上でも続き、お芝居のクライマックスのたたらの男たちの踊り。吾妻寛穂師匠に振り付けをしていただいたものなのですが。これがもう激しいのなんのでして、たった90秒という短いものにもかかわらず、踊っていると血中の酸素が急激に不足してきて、筋肉が悲鳴を上げだすという肉体疲労のクライマックスでもあります。踊り終えて、今日の仕事はおしまいというわけにはゆかないのも旅公演の厳しさでもあります。というのは、明日には別の街、「出雲の阿国」を待って下さっているお客様がいるわけですから、その日のうちに大道具、小道具、衣裳、等々トラックに積み込まなくてはなりません。そして、次の日には別の会場で荷物を降ろして夜お芝居をするという一連の流れが嵐の如く巻き起こってゆくのです。
この中国地方巡演も3分の1にさしかかり、ようやくこの流れもわかっては参りましたが。まだまだ覚えなければならないことでいっぱいでございます。
はじめてずくしの旅はまだまだ続くのであります。
【上滝啓太郎 記】 |