五月に上演する「謎帯一寸徳兵衛(謎と、帯を、一寸=ちょっと解くべえ、っていう、なかなか洒落た題でしょ?)」という芝居は、上方の名作「夏祭浪花鑑」の世界から役名だけ持ってきて、全く関係ない筋をこしらえ、南北はこの作品を書いた。この趣向を、のちの「東海道四谷怪談」に生かした、ということで、なかなか凝った筋の上に、役柄も多彩、しかもあまり上演されていないとくれば、難しいのは当たり前、百も承知、五十も合点。それだけに、これから創っていくのが楽しみで、創作意欲というのはこういう作品だからそそられるんですね。
先日の読み合わせでは、まず「訛り」の一掃。全員が江戸っ子になるのは至難の業ですが、まずそこが第一歩、そして役の声の色を決めていくのも肝腎、3月初めの二日間の稽古は、そこいらのところをそれぞれの役者が思い知るのが狙いと、私めは思いました。だから、来月の稽古入りまでの、それぞれの研究、ってやつが物をいうわけです。でもね、先輩たちは「ラジオ放送」という、とっておきの研究材料を残しておいてくれたんですよ、ここだけの話。
スタジオで録音して、NHKで放送した、動きの解説と下座音楽入りの本格で、まるで劇場で芝居を観てるような臨場感、もちろんテレビで見る歌舞伎とは大違いで、絵を想像する分、楽しみが倍加するって訳です。
|
◇ご覧のとおり、台本です。
来月の稽古入りまでの、それぞれの研究、ってやつが物をいうわけです。
|
移動の車内は、そのテープに「耳ったけ」で、これからの「三人吉三巴白浪」鑑賞団体中部北陸ブロック例会の旅、いよいよ始まります。「お客様の手応えはどうか」って?何をおっしゃっちゃってくれはりまんのやねん。いいに決まってまっせ、ちゃんとやれば。つくづくいい芝居だと思います、この「三人吉三」は。全力で毎日の公演を、一回一回大切に勤めて参りましょ。
まずは前夜祭、乾杯。あっ、そうそう、旭川市民劇場の皆様、「女殺油地獄」市民劇場賞の副賞、豪華“かに”詰め合わせ、ありがとうございました。前々夜祭でいただきました。(なんだ、それじゃ毎晩じゃないか)
【藤川矢之輔 記】
|